名人に香車を引いた男

新年明けましておめでとうございます。

 

昨日は初夢を見る日でした。

 

みなさんはどのような夢を見られたでしょうか。

 

私が中学生の頃、当時住んでいた田舎の本屋さんに「名人に香車を引いた男」の本が売っていました。

 

私にとっては、この本が初めて「夢の実現」とは何なのかを教えてくれたように思います。

 

貧乏な家で育った升田幸三は棋士になることを夢見て、今なら中学1年生の年である13歳11か月で家出をしました。

 

その時に母親が使っていた竹製の物差しの裏に墨書したことばが ...「この幸三、 名人に香車を引いて勝つ」でした。

 

その途方もない夢は、太平洋戦争という逆境が始まり、升田自身が徴兵され南国に出兵した為、潰えたかと思われました。

 

しかし、幸運にも一命をとりとめることができ、命からがら日本に戻ることができたのです。

 

帰国後の升田は全身全霊をもって将棋を指し、木村名人、大山名人を香落ちに指しこみます。

 

最後に大山名人に勝利することで夢を実現するわけです。

 

言葉にした夢は実現するということを初めて教えてくれた本でした。

 

少年だった頃の私はしびれました。

 

私も中学生のときは色々夢や希望は持っていました。

 

しかし、中学生の時までは、まずまずの経済状態の家で育ちました。

 

それが故、升田ほどの強い意志をもつことができなかったように思います。

 

人生とは面白いもので、升田幸三は家が貧乏だったから、大きな夢を持てた、

 

まっすぐに自分が歩みたい道に飛び込むことができたともいえるのではないでしょうか。

 

私の話に戻りますが、まずまずの経済状態の家で育った私ですが、人生そんなに甘くありません。

 

18歳の時に、父親が経営していた家業が傾き、倒産、破産の事態になったのです。

 

父親は数億円もの借金をもつ事態になり、私も学校(高専)に行くことが難しい状況になりました。

 

しかし、その時の危機感が勉学に向かわせ、第一種情報処理試験に合格し、今の経済力の礎になったと思います。

 

20歳で卒業したと同時に、父親の代わりに妹と母の二人を扶養することになりました。

 

本当は、高専を卒業したら大学に編入学してその後、東京に出てベンチャー企業に就職して一攫千金を夢見ていました。

 

しかし、まだ小学生だった妹や、離婚して精神的に不安定な母を見捨てることはできず地元の企業に就職しました。

 

そして、3年半ほど母と妹と田舎で一緒に過ごし、妹も高校に元気に行くようになりました。

 

そこで月々11万円の仕送りの約束を母にし、その代わりに隣県にあった格上の会社に転職したのです。

 

自分の人生を再び歩むことができるようになりました。

 

私は人生で一番大切な18歳~23歳の期間を運命によって縛られていました。

逆境でした。

 

しかし、この逆境があったからこそ、今の私があると思っています。

 

・逆境があったからこそ、一生懸命勉強するようになった。

 その後の人生を生き抜くための武器となる資格をとることができた。

 

・逆境があったからこそ、自分の人生を自分のためだけでなく、妹や母のために使うことができた。
 「与うるは受くるよりも幸いなり」の意味を知ることができた。

 

「艱難汝を玉にす」は、本当ではないかと思います。

 

そして「夢」を持ち続けることは大切で、「逆境」もまた「夢の実現」のためのエネルギーになると思っています。

 

鷺宮将棋サロン会長